本研究は、特許情報を教材化することによりバイオテクノロジー教育の深化を図るとともに、知財教育の新たな展開を試みることを目的としたものである。最終年度である本年度は、遺伝子関連および酵素および酵素精製関連特許について、「PLATORIS」を用い、全文ファイルを含む関連特許情報の収集を行った。ピックアップされた特許は、遺伝子関係では遺伝子組換え植物(USP4940835)、PCR特許(平4-67957、平4-67960)、遺伝子組み換え特許(USP4237224)、DNAシーケンサー特許(USP4811218)などがある。またタンパク質関連特許としては、GFP特許(平10-509881)、熱安定性DNAポリメラーゼ特許(平3-31434)、さらには糖の特許として、トレハロース特許(3084609)などが教材化できるものとして得られた。また特許に関する判例のうち、ヒトt-PA事件(大阪高裁、平成8年3月29日、第3292号)やインターフェロン事件(東京高裁、平成9年7月17日、第2857号)をピックアップした。特許のうち特に、トレハロース特許に関して、生体物質科学Iの授業の糖の授業の中で取り上げ、学生の興味を引いた。また判例では、ヒトt-PA事件を資料作成し、アミノ酸のところで取り上げた。また実験では、昨年に引き続き、3回生の実験(物質科学IV)の中間に簡単な特許に関する説明講義を入れた後、PCRに関する実験(自己細胞からのDNAと抽出とPCRによるALDH遺伝子の判定)実施し、最終レポートで、PCR特許の請求項と実験との相違について問うレポートとして課し、その回答を集計解析した。昨年度の回答では、例えば、請求項を分けてそれぞれについて判定を求めたのであるが、全体あるいはの部のみでの判定が多く、さらに要素ごとに分けて判定を行っていないこともわかった。そのため、今年度は、さらに文章を分解し、それぞれの要素について、判定理由を書かせることにした結果、正解率の向上が見られた。つまり学生にとっては、技術要素の分解になれていないことがわかった。これらの成果について、日本知財学会等での発表準備中である。
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