研究概要 |
アフリカイネ由来の遺伝的作用を特定する上で有効な材料であるアフリカイネ染色体部分置換系統群(GILs, Glaberrima Introgression Linesの略)に由来する分離集団から見出され,その後代系統の中から特異的な形質を示すイネ固定系統(近似同質遺伝系統)の作出に一部成功した.候補となる系統の中から,置換染色体領域が絞り込まれていることをDNA(SSR)マーカーを用いたPCR法によるDNA多型(ジェノタイプ)解析により明らかにし,一方で形質の変化(草丈伸長)が著しいこと(計測結果:フェノタイプ)の対応から,個体選抜を行った結果である.選抜された数系統の固定系統は,遺伝的背景である親系統(アジア稲)に対して,有意に草丈が高い特徴をもち,この特徴は,個体栽培(ポット栽培や水耕栽培)であっても,水田における群落栽培であっても高い再現性をもって発現することを確認した.これらのことから,ゲノム組成がほとんど親系統(アジアイネ)であっても,別の親系統(アフリカイネ)由来の作用の大きいQTL領域に置き換わることにより,形質の変化を観察するのに非常に適したイネ系統であり,中学校の技術・家庭科(技術分野)の中の生物育成の学習の中でバイオテクノロジーを教える教材として,発展させることが期待される.同様の方法で今年度,穂数(茎数)が増加する系統の選抜に向けた候補系統の育成にも着手したことより,来年度は複数の形質に関して教材化に向けた研究を行う予定である.
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