研究概要 |
アフリカイネ染色体部分置換系統群(GILs, Glaberrima Introgression Linesの略)に由来する分離集団から固定イネ系統(近似同質遺伝系統)を作出した.昨年度注目した「草丈伸長能」と同様に,今年度は「多分げつ能」に注目し,これまで行って来たQTL(量的遺伝子関連遺伝子座)の絞り込み,固定化をすすめ,比較対照の親系統より,生育期間を通じて分げつが20~30%多く発生する系統(近似同質遺伝系統:NIL)を選出した.また,親系統との生育,収量の比較により,選抜されたNIL系統は,遺伝的背景である親系統(アジア稲)に対して,1.分げつが増えることで最終的な穂数が増加すること,2.穂数が増えることで,1個体の着生籾数が増加すること,3.籾数が増加する中,登熟歩合は低下しないこと,4.その結果,1個体当たりの収量が親系統より大きく向上すること,等が示された.再現性の問題もあるので,収量については,さらに年度を改め,継続して調査を進める必要性がある.以上,2年間の研究で,草丈伸長,分げつ(穂数)増加といったイネの生育を大きく変化させうる2種類のNIL教材を作出することができたことにより,中学校技術科の生物育成学習の中でバイオテクノロジーを教える教材として発展させることが次の課題となった.そこで,上記の研究に並行して,まず近隣の中学校において,試行的に本教材を用いた生物育成に関する授業実践を行ったところ,中学生にとって「バイオテクノロジー」という概念の浸透が問題であり,概念を解説するための教材も必要であることが明らかとなった.以上により,植物材料(種子や栽培技術),提示資料,ならびに評価方法といったものを総合的にパッケージ化することが,教材化を行う上で重要であることが確認された
|