研究概要 |
アフリカイネ染色体部分置換系統群(GILs,Glaberrima Introgression Linesの略)に由来する分離集団から固定イネ系統(近似同質遺伝系統:NIL)を作出し,それを中学校技術科において必修化される「生物育成」の内容における新しい教材として位置づける試みを行った.注目した形質は平成20年度において明らかにした「草丈伸長能」,ならびに2011年度に明らかにした「多分げつ能である.本研究における2年間の研究で,草丈伸長,分げつ(穂数)増加といったイネの形態的特徴を大きく変化させることのできる2種類のNIL教材を作出したが,本年度においては,中学校技術科の生物育成学習の中でバイオテクノロジーを教える教材として発展させることを課題として,研究協力者である中学校技術科教員と連携し,近隣の中学校において,試行的に本教材を用いた生物育成に関する授業実践を行った.また,栽培方法には,代表者が手法を開発した教材「ペットボトル稲」の栽培方法を駆使し,安価で大人数が同時に実践できる取り組みとし,教育現場で実際に実践可能な栽培方法を確立した.前年における試行的実践の結果を踏まえて,提示資料(プレゼンによる実践の背景の説明)を工夫したが,実践の事前・事後のアンケート結果から,中学生にとって「ゲノム」や「バイオテクノロジー」という言葉の理解度は本来低く,興味も低い傾向(5件法:5ポイント中,2.97ポイント)にあったが,実践により興味が向上すること(5件法:5ポイント中,3.68ポイント)が明らかとなった.さらに,今後の展開として,2つの形質に関わる各遺伝作用の集積による多収性の成立,いわゆる「ピラミディング効果」を理解させる教材の開発を目指して,今年度中にF2種子を得ることができた.
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