研究概要 |
「間違った中国語」を出力するチャターボットを用いて、オンライン中国語教材を開発し、30名程度の2クラスで試用、その効果を観察・分析した。6月に行った予備調査により、当初予定していた「リスニング練習」以外に「作文」「文法」のドリルでの効果が高いことがわかったので、開発と検証を追加した。また,グループ学習の効果を高めるためのゲーム型学習教材を派生した。 (1)チャターボットの間違いを修正する際,学生同士で話し合いながら解決するので,自律学習に向けた雰囲気の醸成に役立った。 (2)オンライン学習の学力向上に結びついているかの検証について,学期末試験の成績は使用したクラスの平均点が他クラス平均をわずかに上回ったが,有意な差は認められなかった。 (3)今回のシステムでは,学生自身の作文の正誤,コンピュータの誤答に対する学生の反応(速度や真偽)の両方を学習行動履歴として保存している。その結果,学生自身の正答・誤答・学習時間だけに注目した従来の記録に比べて,客観性,安定性に優れた学習データが得られた。 以上おおむね,当初期待した成果を上げられたが,研究期間内に開講予定の中国語授業が不開講となったために,予定のデータ数を確保することができなかった。また,フランス語版は「間違いの発生」という肝心の動作が安定しなかった。今後の課題とし、引き続き開発と検証を継続する。 理論の拡張という面で見ると、今回は教育工学を基礎とし情報メディア論の知見から検証を行っている。それに加えて研究期間後半には、認知科学的手法による視聴覚教材論など、異なる理論を援用しても同様な結論に達するという仮定に基づき、「教科書」としてオンラインシステムを見た場合に、学習者の主として情動面にどういう影響があるか、資料に基づいて検討し、実践で得られたデータを裏付けることができた。
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