近年の教育では、社会構成主義的な学習観から協調学習が注目されている。複数の学習者の協調では、非言語的なコミュニケーション、暗黙知の共有など豊かな情報空間として対面環境での協調作業が有効であるが、このような作業ではホワイトボードやその上に貼り付ける付箋紙などが主要な情報ツールとなっている。これに対して、複数の利用者が個々にマウスやキーボードなどを使用し、一つのディスプレイを共用して協調作業を行うSingle Display Groupware(SDG)が提案され研究が着手されつつあり、申請者も同様の概念をPCの拡張という意味でSocialized Computer(SC)と名づけ、研究を進めている。 本研究ではワークショップなどの場で多用されるホワイトボードと付箋紙を用いた作業をSDG/SCの構想にそって複数の学習者が同時に操作できるアプリケーションとして実装し、授業実践の場を利用してシステムのもたらす効果を明らかにすること目的としている。本年度は複数のマウスを独立にハンドリングするミドルウェアとしてカルガリー大学で開発されたSDGtoolkitを利用し、ホワイトボードと付箋紙を用いた作業を画面を共有しながら複数の利用者で同時にアクセスできるアプリケーションについて平成21年度につづき実装を進めた。また並行して小学校などでの協調学習の教育ニーズについても調査を行った結果、すでに開発したマルチマウスクイズへの利用ニーズがあることから、2つ小学校の協力を得て授業の中で使用する実践利用と効果の分析、システム改善などの研究を併せて進めた。
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