近年の教育でば、社会構成主義的な学習の捉え方への学習観の変化に伴って、実践面でも協調学習が注目されている。複数の学習者の協調を考える場合、情報空間として対面環境での協調作業が有効であるが、このような作業では現実には電子的な支援環境が貧弱であり、ホワイトボードやその上に貼り付ける付箋紙などが主要な情報ツールとなっている。 これに対して複数の利用者が個々にマウスやキーボードなどを使用し、一つのディスプレイを共用して協調作業を行うSingle Display Groupware (SDG)が提案され研究が進められており、申請者も同様の概念をPCの拡張という意味でSocialized Computer (SC)と名づけ、研究している。具体的には協調学習の場で多用されるホワイトボードと付箋紙を用いた作業をSDG/SCの構想にそって複数の学習者が同時に操作できるアプリケーションとして実装し、実践の場を利用してシステムのもたらす効果や課題を発見しようとするものである。 平成23年度にはこれまでに開発を進めてきたホワイトボードと付箋紙を用いた作業を画面を共有しながら複数の利用者で同時にアクセスできるアプリケーションの実装を完了した。作成したアプリケーションについては大学院生を実験協力者にブレインストーミングでの利用を想定した実験を行い、ユーザビリティなどの評価を行った。 また平成22年度からは本構想の中ですでに開発したマルチマウスクイズシステムについて小学校に導入された電子白板を活用することで授業に効果的に利用する研究も行っているが本年度は利用対象校を2校から4校に拡大し、教員の工夫による多様な運用可能性を探るとともに、1校においては協調学習に利用する際のマウスを共有するグループサイズについての系統的な利用実験を行った。
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