研究概要 |
国宝蟹満寺釈迦如来坐像の技術調査を行い、X線透過写真撮影を行った。本像は青銅の鋳造製品であるが、外鋳型を分割した方法なのか、蝋型鋳造のように分割しない方法なのか、これまで明らかにされていなかった。鋳型を分割する方法であれば、合わせた鋳型の隙間に青銅が流れ、鋳バリができる。この時、薄い鋳バリは厚い本体と比べ凝固速度が早く、金属組織は微細化し、本体部は粗大化する。粗大化によって鋳鬆が内部にでき、それがX線透過写真に写しだされる。この凝固組織の差がX線透過写真にどのように映し出されるのか、8枚の実験試料を鋳造しX線透過撮影を試みた。先ず、200mm×200mm×厚さ10mmの青銅板に高さ20mmで厚さ0.2mmと1.0mmの鋳バリを十字に交差するように発生させた。溶湯温度高・低、外型に水を含ませる・含ませない4種類で鋳造し、表面を平坦に研磨しX線透過撮影した。そのうち2枚は鋳バリ部分に鬆が少なくその他の部分に鬆が多い映像となり明暗で差があり、もう1枚はかすかに違いが写った。次に200mm×200mm×厚さ3mm,6mm,9mm,12mmの意図的に厚さを変えた4種類に、外型に水を含ませないで鋳造し、X線透過写真を撮影したが、1回目の撮影ほどには痕跡が写しだされなかった。更に高い放射線量でも鮮明に撮影したが、同様に1回目ほど明確な差は写しだされなかった。4種類のうち鋳造肉厚が厚い試料のほうが、凝固速度が鋳バリ部と異なり、明暗の差が1回目の実験のように明確に写ると予測したが結果は異なった。しかし、鋳バリ下層の凝固が他よりも早いため、鋳鬆の発生はそれに影響されていることが明らかになった。この2つの結果を援用すれば、鋳造後に鋳バリを平坦に研磨したとしても、X線透過撮影によって、その鋳造品が分割法か蝋型のように分割しない方法かが解明できる可能性があることが判明した。
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