研究課題/領域番号 |
21650233
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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研究分担者 |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60443420)
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キーワード | 蟹満寺釈迦如来坐像 / 実物大試料 / X線透過撮影 / 分割型鋳造法 / 鋳型材質 / 中国古代青銅器 / 遊牧民青銅器 / 三角縁神獣鏡 |
研究概要 |
青銅製品に現れる鋳バリからその鋳型製作法を解明し、東アジアの鋳造法変遷を研究することが目的である。製品を研磨すれば鋳バリは無くなるが、前年度の小試料を更に展開し蟹満寺釈迦如来坐像実物大の部分試料を鋳造し、内部に鋳バリが影響した凝固速度の違いによる金属組織がX線透過撮影にどのように写るか検証した。もう一方で、鋳バリを十分に研磨しない製品からその鋳型製作法や鋳型材質などを検討した。前者は、蟹満寺釈迦如来坐像の全身のX線透過撮影写真と、厚さ、衣形状、型持ちを本像に似せた70cm×40cmで鋳造厚さ17~35mm(像体厚さ17mmに衣の隆起部が35mm)、青銅型持ち5個で鋳造した試料のX線透過撮影写真を比較した。試料は土(真土)型で外型を4個に分割し、それらの型の合わせ目に十字状に厚さ0.5~2mm、高さ3cm以下の鋳バリが発生する。合わせ目を削って鋳バリが2mm程に厚くなるよう試料のなかに様々な鋳バリ形状を鋳造した。この試料の表面を切削し鋳バリを取り去り、一般的な青銅製品の仕上げ同様、1~2mmほど削った。国宝蟹満寺釈迦如来坐像は、290kvで撮影したため、試料も同じ条件で撮影し映像を比較した。前年度の小試料厚さ10mmでは鋳バリ跡に線状に、鋳バリ跡を境に凝固が区分される痕跡が写し出されたが、本実物大試料には明確な痕跡は写し出されなかった。蟹満寺釈迦如来坐像はX線の透過率も良く内部気泡や引け巣が多く写るが、試料に写し出された諸現象は釈迦如来坐像よりも特徴の少ないものとなった。これらの結果から、X線透過撮影写真に鋳バリ痕跡が明確に写らない場合でも、分割しない蝋型鋳造法と断定できず、鋳バリが発生する分割型鋳造法の可能性が否定できないことが判明した。後者は、黒塚古墳出土三角縁神獣鏡に現れた鋳バリを精査し、鋳型材、鋳型製作法、同形鏡の製作方法について検討した。中国殷周青銅器?の釣手の製作法は長く不明であったが、泉屋博古館所蔵青銅器を丹念に鋳バリ痕跡調査し、4種に区分される釣手鋳造方法を解明し論文発表の予定である。中国北方遊牧民青銅?の鋳バリ調査からその鋳造方法を解明し論文発表の予定である。
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