研究概要 |
本研究では,駅構内,複合商業施設など複雑な屋内空間を持つ環境を対象に,プリント基板配線の技術を応用することで屋内空間に適したデータ構造を実現可能とし,かつ認知科学を応用することで人間にとって迷いにくく,分かりやすい経路探索・経路表示を可能とした屋内空間向け経路探索・経路表示手法を確立することを目的としている. 平成22年度には,認知科学の考えに基づき,屋内空間の歩行にあたり人間が持つ方向判断基準の妥当性,特に(I)方向感覚質問による点数軸による評価,(II)歩行時間軸による評価,(III)チェックポイント軸による評価などを試みた.以下の手順で研究を進めた. (認知調査1)池袋サンシャイン60を中心とする複数層を持つ複雑な屋内空間において,被験者のナビゲーション能力や実験場所近辺へ行った経験等に基づき,被験者の場所熟知度が分散するように分類した. (認知調査2)被験者集合に,屋内空間において複数の経路を歩行させ,上記(I)~(IV)に対して人間が持つ方向判断基準を調査した. (認知調査3)(認知調査1および2)を複数回行い,統計処理することで,人間が持つ方向判断基準の妥当性,ランドマークとなる目標物のあり方などを検討した. (認知調査1)~(認知調査3)により,(I)に関して,平均的な空間認知能力を持つ被験者は,空間認知能力が低い被験者より,到着実時間が過大になりやすく,目安時間を超過しやすいことが実証された.(II)に関して,目安時間に対する到着実時間の超過傾向に加え,経路の長距離化や複雑化に伴う超過時間の増加傾向が明らかとあることが実証された.(III)に関して,歩行者ナビゲーションにおけるチェックポイントとランドマークの関係性を見い出した. 今後,これらの実証結果をふまえ,前年度の屋内空間データに基づく総合的な経路探索・経路表示手法を確立することを予定する.
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