平成21年度は(1)同位体トレーサー法・核磁気共鳴法による堆積物有機態窒素計測法の確立、(2)天然堆積物中の有機態窒素の化学構造解析、の2項目を実施した。 (1)については、岩手県大槌湾の堆積物を用いて実験的にN-15標識無機窒素化合物を有機化させた堆積物試料を作成し、有機化生成物を分画精製する手法を検討した。現在のところ、超音波抽出を併用した反復温アルカリ抽出によって最高40%弱の収率で分画精製できている。しかし抽出率を上げるために今後なお手法の改良を試みる必要がある。また有機化生成物の微生物分解実験を実施したところ、20℃の条件下では2ヶ月あまりの期間で半分程度が分解されうることがわかった。核磁気共鳴法による構造解析については、モデル化合物等を用いて測定条件の検討を行った。堆積物からの抽出有機物に関しては、現段階では抽出率が高くないため、十分に再現性のある測定結果が得られていない。今後、抽出条件と測定条件の双方について改良を加える必要がある。 (2)については、瀬戸内海等いくつかの内湾域、海草藻場等において長さ200cmの堆積物柱状試料を計10本取得した。一部については既にC-14年代測定とバルクの有機態窒素分析を終了している。今後、残りの試料についても速やかに分析を進めるとともに、堆積物からの有機態窒素の抽出法と核磁気共鳴による測定法が確立し次第、構造解析を進め、非生物学的有機化によって生成された有機態窒素を検出することを試みる。
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