研究概要 |
本申請研究課題は,環境に影響を与えずに採取できる鳥類の卵殻の安全同位体比に着目して環境影響をモニタリングするという試みである.鳥類の卵殻の安定同位体比は,産卵する数目前に食した餌や飲水に影響されると考えられている.このような性質を利用して,鳥類が繁殖前に活動する範囲の環境の変化がモニタリングできると考えている. 5~6月は,カワウ,サギ類など,8月は,カルガモ,カイツブリなどを採取した.中海周辺のカワウについては,漁業被害が大きいため,米子水鳥公園ネイチャーセンターが繁殖抑制実験を行っている.それで得られた卵殻を提供していただいた.その他の卵殻は,雛が生まれた後のものを用いた.また,8月に中海で湖沼環境調査および底質調査を行い,湖沼周辺の生物相を確認した.濤沸湖については,聞き取り調査および環境,ショートコアリング調査を行った. 採取した卵殻を切片にして実体顕微鏡やレーザー顕微鏡で観察した.個体による差が予想以上に大きく,大まかな分布であるが,種による違いも見られた. 炭酸塩卵殻の酸素・炭素同位体比の測定は,質量分析計の不調から行われていない.炭酸塩卵殻を粉末にした状態で保存している.今後最終年度試料と共に一部外注する予定である.炭酸塩卵殻の有機物濃度及びC/N比については前項で測定した炭酸塩卵殻の粉末を用い,CHNS元素分析計で全有機炭素濃度,全窒素濃度を測定した.また,それらの値からC/N比を算出した.この項目も個体による差が大きく,大まかな分布では,種による違いも見られたが,まだ検討の余地がある.最終年度の試料と共に再度検討し,卵殻による周辺環境分析を検討する.
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