研究概要 |
本申請研究課題は,環境に影響を与えずに採取できる鳥類の卵殻の安定同位体比に着目して環境影響をモニタリングするという試みである.鳥類の卵殻の安定同位体比は,産卵する数日前に食した餌や飲水に影響されると考えられている.このような性質を利用して,鳥類が繁殖前に活動する範囲の環境の変化がモニタリングできると考えている.また,周辺環境との関連性を比較するため,中海,濤沸湖の湖沼調査も行う.中海ではモニタリング調査を行う. 毎月,中海で湖沼環境調査および底質調査を行い,湖沼周辺の生物相を確認した.また,中海の表層堆積物CNS元素分析を行い,中海本体では季節的な変化は認められなかったが,本庄水域ではそれが認められた.本庄水域を生活の場とする鳥類には,季節性が示唆される.濤沸湖については,聞き取り調査,卵殻採集調査および環境調査のまとめを行った.卵殻は採集できなかった. 採取した卵殻を切片にして実体顕微鏡やレーザー顕微鏡で観察した.個体による差が予想以上に大きく,大まかな分布であるが,種による違いも見られた. 炭酸塩卵殻の酸素・炭素同位体比の測定は,質量分析計の老朽化により信頼できる測定値が得られていない.炭酸塩卵殻を粉末にした状態で保存している.外注することを検討したが,予算的に難しいと判断した.炭酸塩卵殻の有機物濃度及びC/N比については前項で測定した炭酸塩卵殻の粉末を用い,CHNS元素分析計で全有機炭素濃度,全窒素濃度を測定した.また,それらの値からC/N比を算出した.この項目も個体による差が大きく,大まかな分布では,種による違いも見られたが,まだ検討の余地がある.現在のところ,これは採餌場の違いによるものと考えている.さらなる継続調査が必要である.
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