研究概要 |
目的:原油に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)類の等の有害化学物質が海や陸に生息する動物に及ぼす影響が懸念されている。実際に、重油が流出した汚染海域において、稚魚の脊柱彎曲や魚のふ化個体数の減少が観察されている。本研究では、PAH類の魚の骨代謝に及ぼす影響を評価し、以下に示す成果が得られた。 研究成果 1)キンギョへのPAHの投与実験(in vivoの実験):キンギョの腹腔内にPAHの1種であるベンゾピレン(5μg/g BW)を投与すると、血液中のCa濃度は、24時間で有意に低下して、72時間でコントロールのキンギョと同じレベルにまで回復した。ウロコの破骨細胞は、12及び24時間で有意に低下して、その後48時間でコントロールと同じレベルにまで回復した。破骨細胞の活性が一過的に低下したので、血液中のCa濃度が低下した可能性が高い。一方、ウロコの骨芽細胞の活性は、48時間から有意に低下して、72時間後も低下した状態が続いた。胆汁中のPAHの代謝産物を測定すると、胆汁中に水酸化PAHが検出されたので、ウロコの骨芽細胞の低下の原因は、水酸化PAH(4-OHBaA等)である可能性が高い。 2)水酸化PAHの魚のウロコに対する作用(in vitroの実験):水酸化PAH(4-OHBaA及び3-OHBaA)のウロコの骨芽細胞及び破骨細胞に対する作用を解析した。その結果、4-OHBaA及び3-OHBaAは、共にウロコの骨芽細胞及び破骨細胞の両方の活性を抑制することが判明した(Life Sci., 2009)。今後、ビタミンDの防御作用を解析する予定である。
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