研究課題
福島原発事故に伴う広範囲の放射能汚染によって、住民への放射線被ばくの影響が危惧されている。特に低線量放射線被ばくの影響を正確に評価するためには、感度の高い細胞レベルでの被ばく影響の研究が非常に重要と考えられる。本研究では細胞の放射線被ばく影響を調べるために、DNA損傷等を吸収線量とともに細胞を観察出来る放射線応答細胞チップの開発に取り組んだ。開発した放射線応答細胞チップは、マイクロ加工技術によって細胞外マトリックスパターンが形成され、細胞が人工的に配列されている。また、小型の中性子源^<241>Am-Beと黒鉛パイル中性子減速材を用いて熱中性子捕獲反応^<10>B+n→^7Li+α(質量数10のホウ素は他の元素に比べ反応断面積が数桁高い)により、細胞チップ内の細胞に高エネルギーアルファ粒子が照射される。さらに、DNAの2本鎖切断(DNAdsb)によって生成されるγH2AXのフォーカスを放射線吸収線量とともに観察する。培養細胞は、ヒト子宮頸癌由来HeLaを用いた。細胞チップ基板には、CR39固体飛跡検出器と^<10>B含有蛍光ガラス線量計基板の2種類を用意し、基板上でHeLa細胞を培養した。CR39を用いた場合では、^<10>Bの熱中性子捕獲反応による^7Liとα線は化学エッチングによって、それら荷電粒子の飛跡を観察した。蛍光ガラス線量計基板では、紫外線励起による蛍光観察を行った。CR39を用いた放射線応答細胞チップでは、細胞核内のγH2AXのフォーカスとエッチトラックが対応していることが示された。しかし、蛍光ガラス線量計基板では、γ線のバックグランドが高いことや、蛍光強度が小さいために、細胞核内のγH2AXのフォーカスと荷電粒子の飛跡の関係については十分に観察出来ていない。蛍光ガラス線量計基板の改良が必要である。
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