研究概要 |
多摩川へ流入する下水処理場放流口近傍に棲息するコイを採取し、解剖し、エラ・肝臓・筋肉・生殖腺中の臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)濃度を測定した。コイの組織中からは、現在までに使用されたいずれのPBDEs製品にも含まれずかつBDE209由来とみられる構造の異性体(BDE179,BDE188,BDE202)が検出された。また、石面付着物・水試料からもこれらの異性体は検出された。デカBDEの使用により放出されたBDE209がコイ体内での代謝を受け、低臭素化PBDEsとなることが示唆された。各組織のPBDEs組成は類似しており、4臭素PBDEのBDE47が検出成分中で大部分を占めていた。一方、同地点で採取した放流水及び石面付着物中のPBDEsでは、臭素数5以上のPBDEs(BDE99,BDE179,BDE209)の割合が大きく、BDE47の割合は小さく、コイの組織中と大きく異なる組成を示した。このことから、BDE47以外の異性体はコイの体内で代謝され、低臭素化されることが考えられた。 東京湾湾奥部で採取したスズキの体組織中のPBDEsの測定を行い、多摩川のコイの測定結果と比べた。スズキに比べ、コイの筋肉中のPBDEs濃度は4倍程度高くかった。組成ではBDE47の占める割合はコイの方がスズキに比べ大きく、逆に臭素数5以上の成分は、コイはスズキに比べ低い割合となった。一方、それらの魚の周辺環境中のPBDEs組成を比較すると、BDE47の割合は海水中で大きく、コイの生息する下水処理水中では高臭素のPBDEsの割合が大きかった。以上より、コイはスズキに比べてPBDEsの代謝能が高く、取り込んだPBDEsを脱臭素化し、BDE47の形で体内に蓄積していると考えられた。 魚体内での有機ハロゲン系化合物の代謝を実測するために,肝臓のミクロソーム画分を精製し、そこに標準物質を添加して分解過程を追うin vitroの実験系を確立した。予備的な実験の結果、BDE99が脱臭素してBDE47へ代謝されることが確認された。
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