研究概要 |
胎児期でのビスフェノールA曝露の影響がそのまま継続し,中年期や高齢期に至ったときの運動機能への関与が懸念されている.そこで,実験動物を用い,周産期でのビスフェノールA曝露と中齢・老齢期になったラットの運動機能との関係について,動物の行動学的解析と小脳の形態学的解析の結果を対比しながら検討し,運動の制御・調節の変化と小脳の構造変異の関係を明らかにすることを主目的として研究を継続中である.さらに,得られた結果をもとに,加齢に伴うヒトの運動機能障害とビスフェノールA曝露との関連について討議する予定である. 実験にはWistarラットを用いている.すべての実験動物は,東京都健康長寿医療センター研究所実験動物施設のSPF環境にて,厳密に管理された条件下で飼育した.ビスフェノールAを曝露した仔ラットを作成するために,母ラットとして3ヶ月齢の雌ラットをもちい,ビスフェノールAを1週間経口投与した後,交尾・妊娠させ,さらに継続して出産から授乳,離乳期まで母ラットにビスフェノールAの投与を続けた.ビスフェノールAは0(対照),0.1(低用量),100(高用量)mg/kg/dayの3段階に分けて投与した.これにより,小脳形成に最も重要な時期(胎児期-新生児期)にビスフェノールA曝露された仔ラットできたと考える.上記の処理により低用量処理ラット(雄15匹,雌14匹),高用量処理ラット(雄14匹,雌21匹),無処理ラット(雄8匹,雌15匹)を得ることができた.これらの仔ラットは,中齢期(10-12ヶ月齢)および老齢期(20-24ヶ月齢)に達した時に今後のビスフェノールAの実験にもちいるために,通常条件下で飼育中である.なお,生後4週齢を経過したラットの体重は,雌雄ともに処理群と無処理群との間に有意な差は認められず,ビスフェノールAの急性的な影響はないと考えられる.
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