研究課題/領域番号 |
21651028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗栖 太 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (30312979)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20431794)
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キーワード | 環境微生物 / アイソトープアレイ / ゲノム断片アレイ / 微生物群集解析 / メタゲノム |
研究概要 |
本年度は純菌株を用いて1)検出ツールとなるアレイ自体の特異性、及び2)14C標識によるハイブリダイゼーションの検出感度について確認し、この手法による検出の特異性と感度を検証した。さらに、3)環境サンプルとして下水処理場活性汚泥を用い、酢酸とメタノールを資化する微生物の検出を試み、成功した。 1)アレイの特異性に関する検討 3種類の純菌株のDNA断片を載せたアレイに対し、1種類の純菌株のDNA断片をハイブリダイズし、同じ菌種由来のスポットのみにハイブリダイズするか確認した。アレイの作成には、各純菌株からDNAを抽出し、制限酵素消化により断片化し、クローニングを行って断片ごとに分離・増幅したのち、各菌株由来の各クローンをメンブレンにスポットしメンブレンアレイを作成した。その結果、各純菌株由来DNAは特異的にそれぞれの菌株由来のプローブにのみハイブリダイズし、特異的に検出できることが分かった。しかし、48プローブ中1プローブについては、残り2種類の純菌由来DNAともハイブリダイズした。このプローブの塩基配列を解読したところ、リボソームRNA遺伝子の塩基配列を含んでいることがわかった。リボソームRNA遺伝子の塩基配列は、種間で相同性が高いことが知られている。このような遺伝子の配列がスポットされているプローブについては、クロスハイブリダイゼーションの可能性があることが示された。 2)14C標識によるハイブリダイゼーションの検出感度の検討 サンプルDNAの14C標識率、ハイブリダイゼーションを行う際のDNA濃度と、アレイにスポットされたDNAの密度について、それぞれ設定した実験系により、検出強度との関係を明らかにした。その結果サンプルのDNA濃度、スポットされたプローブのDNA密度と、検出強度には、試験した範囲において線形的な関係があることが明らかとなった。また、1スポットあたり2.5cpmの放射能が検出下限であることがわかった。 3)活性汚泥中の酢酸・メタノール資化微生物の検出 下水処理場に設置した実験装置から活性汚泥を採取し、放射性同位体標識した酢酸、及びメタノールを投与して標識し、同一サンプルで作成したアレイとハイブリダイズさせた。その結果、各基質に対して複数のスポットからシグナルを得ることができ、本手法で実際のサンプルを解析可能であることが示された。また、酢酸、メタノール標識試料の両方で検出されるプローブも存在したことから、両方の基質を資化可能な微生物が存在している可能性が示された。
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