微生物生態系がどのような仕組みで成立しているのかを探るため、模擬微生物生態系を構築し、供試菌株間の相互作用の解析を増殖の面から解析している。これまでの研究において、Pseudomonas putida C6株、Ralstonia sp.chemo32株およびVariovorax sp.HAB30株の3菌株の混合連続集積培養系において、優占種の変遷が生じHAB30株が最終的な優占種となることが分かっている。今年度、この現象を解明する一環として、純粋連続培養集積により調整した上清を用いて、3菌株間の相互作用を調べた。その結果、「1菌株対1上清」の相互作用解析から、C6株は他の2菌株の増殖を極めて強く抑制することが示された。そのため、HAB30株の優占化現象は説明できないと考えられた。しかし、「1菌株対2上清」の相互作用解析から、chemo32菌株の存在によってC6株からHAB30株増殖抑制が軽減されることが示された。以上の結果から、複雑系では、「1対1」ではなく「1対その他」の関係に着目する重要性が示された。 土壌を接種源とした集積培養系では初期の回分培養時にPseudomonas属細菌が優占化し、その後の連続集積培養に伴い優占種の変遷を経てVariovorax属細菌が最終優占種となった。そこで、これら2属菌株間の相互作用を解析した。その結果、概してPseudomonas属細菌はVariovorax属細菌の増殖を強く抑制するが、その反応性は菌株レベルで大きく異なることが示された。さらに、一度抑制を受けたVariovorax属細菌は、2度目の培養時には抑制を受けない菌株も見出された。今後、相互作用をタンパク質レベルで解析すること、相互作用物質の解析、そして数学的手法を用いて全体像の解析を実施する予定である。
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