今年度の研究では、新たな3菌株Pseudomonas sp.C8株、Ralstonia sp.P-10株およびComamonas testosterone R2株の異属3菌株の混合連続集積培養系を構築し、その系全体の機能をフェノールおよびカテコールに対する動力学的パラメーターを測定することにより評価し、供試菌株の挙動をフェノールヒドロキシレースをコードする遺伝子を標的としたreal-time PCR法により解析した。 混合培養当初、C8株が優占したものの3菌株の菌密度はほぼ同等であった。しかし、動力学的パラメーターから判断すると、フェノールおよびカテコール分解をR2株が担っていたと推察された。これら安定した混合系に撹乱を与えるために、炭素源(フェノール)の供給を止めることで飢餓状態とし(約10日間)、その後再びフェノールの供給を開始した。その結果、フェノールの再添加によってフェノールおよびカテコールに対する動力学的パラメーターが大きく変動し、最終的にC8株のそれらと一致した。この結果から、システム全体は飢餓状態後のフェノールに負荷に対して柔軟に対応した一方で、その内部ではその機能的役割を変化させていたことが示唆された。その後更なる培養を実施したところ、P-10株の菌密度が徐々に減少し(10^5~10^6 cells mL^<-1>)、C8株とR2株がほぼ同密度で優占化した。その一方で、動力学的解析から、フェノールはC8株が、カテコールはR2株が担っている事が示唆された。現在、供試菌株のゲノム解析を進行させており、今後、本実験で得られた変遷機構について、INAあるいはタンパクレベルで解析し、そのメカニズムを明らかにしていく予定である。
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