研究概要 |
エタノールを原料として,二酸化炭素の副生無しに水素を生成し,同時に炭素を固定する技術の開発を目指して,本年度は以下の成果を得た。 1.熱分解反応/ガス分析システムの構築 エタノール熱分解は管状電気炉に挿入した石英管反応炉で行い,反応生成ガスの分析には四重極質量分析計(QMS)を用いる実験システムを作製した。エタノールが導入される反応管の圧力は1kPa以上であるのに対して,QMSの稼働には10^<-4>Paオーダーの真空が要求される。この圧力差を維持し,反応生成ガスをQMS分析室に導入するために,反応炉とQMSの間に2段の差動排気系を設けた。 2.触媒金属微粒子のSi基板への作製 酸化ケイ素(SiO_2)でコーティングしSi基板の表面にアルミニウム(Al)とコバルト(Co)をこの順で真空蒸着し,Coをエタノール分解用の触媒とした。SiO_2, AlおよびCoの典型的な膜厚はそれぞれ膜厚100nm,2nmと0.3nmである。 3.エタノール熱分解による水素生成および炭素固定の検証 触媒金属付き基板を設置した石英反応炉ヘエタノールガスを導入し,エタノールの分解によって発生した水素および他の生成ガス種をQMSにより分析し,水素発生を確認した。さらに,炭素がナノチューブ状の固体として析出することを走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡により確認した。触媒金属による水素生成の効果を明らかにするため,触媒無しで熱分解した結果と比較したところ,反応の初期には,触媒により水素の生成速度はおよそ1.5倍高くなる事がわかった。しかし,その触媒効果も徐々に低下し,20分後には失われる事が分かった。
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