今年度は、昨年から今年度にかけ分離した「高速増殖性でかつ高重油生産性のボツリオコッカス藻」を使って、1)その増殖へのリンP、や窒素Nなどの主要無機栄養素の影響、2)培養最適温度の検索、3)サブクローン化によるより高増殖のクローンの分離、4)生産重油(炭化水素)の分析、5)遺伝子導入のための単一細胞の分離と単細胞培養法の開発、6)単一細胞からの遺伝子検出(細胞PCR法)をおこなった。その結果、 1)これまで報告されていない新たな完全無機培地の開発に成功した。今後さらにこの開発を進め、将来のプラント化に向けての実用化を図る予定である。 2)これまでに報告されているボツリオコッカスの増殖最適温度は、25℃と報告されているが、今回分離に成功した高速増殖性のボツリオコッカスはその最適増殖温度が29℃と比較的高温で夏の高温水での増殖に適した性質をもつことを明らかにした。 3)さらに、今年度は前年度に分離した高速増殖性のボツリオコッカスからさらに早く増殖する細胞株の分離にも成功した。最高速度DT=1.8日の増殖速度を示した。 4)これらのボツリオコッカス細胞株の生産する炭化水素(重油)の分析をガスクロマトグラフ(GC)で行ったところ、ほぼ単一のピークを持つ炭化水素の生産が見られその乾燥重量当たりの生産量は約50%程度であった。 5)ボツリオコッカスの単一細胞培養法はこれまで確立されてなかったが、今回我々が初めてグリセリンによるsingle cellの叩き出し法を開発することに成功し、またそのsingle cellの培養法の開発にも成功した。 6)さらに、このsingle cellを用いて、遺伝子の単一細胞検出法=single cell PCR法の実用化にも成功した。これによって、ボツリオコッカスの遺伝子組み換えが容易になるものと思われる。
|