今年度は、昨年度分離・育種に成功した「高速増殖性でかつ高重油生産性のボツリオコッカス株"榎本藻"」を使って、1)強光度条件下での生育の検討、2)雑菌との共生による増殖の程度、3)きらに高増殖性の株の分離の試み、4)ボツリオコッカス株の光合成を司るRubsCo蛋白複合体を構成する遺伝子の1つであるRubsCo小サブユニット蛋白の遺伝子rbcS遺伝子のクローニング、に取り組んだ。 その結果、 1)重油生産・増殖と光強度の研究では、CO2濃度を10%から15%程度に上げれば、光強度も太陽光と同程度の10万ルクス程度まで強くしても、十分成長可能であることが明らかとなった。 2)将来の野外培養を考えて、雑菌との共存下で十分な成長が得られるかどうかは重要な点だが、今回はこの点を明らかにするため、ボツリオコッカスと共存する代表的な細菌を単離・同定した。同定した細菌2属、bacillus属菌1種、とAcinetobactor属1種を使って、ボツリオコッカスの増殖への影響を調べた。その結果、これまでボツリオコッカスの成長を抑えると報告されているAcinetobactorでも、bacillus菌でもボツリオコッカスの新規株"榎本藻"の成長には何ら阻害作用を示さなかった。 3)将来の工業化、プラント化を想定して、さらに高増殖性・高重油生産性株を開発することは重要なテーマである。今回は、これまで平均2.5日で分裂増殖する"榎本藻"の更なる高増殖性株の開発をコロニー選別法で行った。その結果、DT<2.0日を切る株の開発は現在まだ出来ていない。しかし、コロニーレベルでは、2.0日を切る亜株も出現してきているので将来的は可能性は十分ある。 4)RubsCo遺伝子のクローニングは、mRNAもゲノム遺伝子も部分的には出来たが、現時点でmRNAもgenomeも100%の塩基配列の解明には至らなかった。今後引き続き遺伝子クローニングを継続して行う予定である。
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