研究概要 |
1. 背景と目的 ポリエチレン(PE)に代表される汎用プラスチックは石油を原料としており、石油資源の枯渇化ならびに資源循環型社会構築への対応としてリサイクル性の付与が希求されている。そこで本研究では、回収したPEにリサイクル性を付与することを目的として、PE末端にフラン基を導入し、ビスマレイミド(BMI)とのDiels-Alder(DA)反応を利用した易リサイクル性樹脂の調製を検討した。 2. 研究成果 PE(Mn=30000)からテレケリックPEを調製するにあたり、PE単結晶の調製と折りたたみ鎖部位の選択的酸化を利用することで、PEセグメント長の確保と末端への官能基導入が可能であると考えた。キシレン中で調製したPE単結晶を硝酸処理することで、末端にカルボキシル基を有するテレケリックPE(PEC)を調製した。粘度測定より算出した平均分子量はMw=1200であり、AFMで測定した単結晶の結晶厚10nmに対応している。酸化の際にニトロ基も導入されるが、処理時間が長くなるに従ってカルボキシル基の比率が増大する。カルボキシル基の導入率が最大となる120時間で酸化処理を行なった。得られたカルボキシル末端テレケリックPEにフラン基をエステル結合で導入し、末端にフラン基を有するテレケリックPE(PEF)を調製した。PECは溶解性に乏しいために、末端修飾率は約70%であった。PEFに鎖延長剤として1,3-ビス(マレイミド)ペンタンと1,1'-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミドを加え、145℃で20分熱処理をし鎖延長を行なった。その後80℃に冷却するサイクル4回を繰り返した。DA反応は80℃で進行し、145℃で解裂反応が熱可逆的に起こる。IRで1636cm^<-1>に現れるDA付加体C=C結合のピーク強度と1508cm^<-1>に現れるフラン基由来C=C結合のピーク強度比の変化により、結合の可逆性を評価した。可逆的に強度比が変化しており、末端基間の結合と解離が起きていることがわかった。脂肪族マレイミドにおいても同様の反応可逆性が見られたが、芳香族マレイミドを用いた方が安定した熱可逆性を示した。
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