平成21年度は金ナノワイヤー成長メカニズムを解明することにより、収率の向上および形状制御の指針を打ち出すことを目的とした。合成温度を詳細に変化させて得られる金ナノ構造体は、温度に依存してその形状を大きく変化させ、70~100℃の温度範囲において、ナノワイヤー及びに副生成物であるナノロッド・ナノ粒子が得られた。合成温度の上昇に対し、ナノワイヤーの直径は温度に対して不変であったが、ナノロッドの直径は減少し、またその存在比率も減少した。成長段階のナノワイヤーの詳細な観察により、ナノワイヤーはナノロッドやナノ粒子からの原子供給によって成長することが分かった。拡散の強い高温ではナノワイヤーへの再構築が進みやすい一方で、ワイヤーが切れ粒子化するといった傾向も見られた。ナノワイヤーの収率を向上させるには、合成温度を詳細に制御することにより中間体の形成とナノワイヤーの成長を時間的に分離し、かつナノワイヤーが絡まらないような低濃度で合成する必要がある。ナノワイヤーの直径1.5nmはオレイルアミン溶媒系において最も安定な状態である。溶媒の極性や界面活性剤の配位状態を変えることにより表面エネルギーは変化し最安定な直径が変わる可能性がある。そこでオレイルアミンと同じ1価のアミンであり炭鎖長の異なるドデシルアミンを用いてナノワイヤーの合成を試みたところ、平均直径12nm長さ1μm程度のナノロッドが形成した。混合溶媒を用いるなどして極性や界面活性剤の配位状態をより詳細に変化させれば、ナノワイヤーの精密な径制御が可能になるものと考えられる。
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