平成22年度はAuナノワイヤーをはじめとするAuナノ構造体の配列体の形成とその物理特性の解明を目的とした研究を行った。Auナノワイヤーのトルエン溶液を電子顕微鏡観察用のグリッド上に滴下後、ゆっくりとトルエンを蒸発させることにより、100本程度のナノワイヤーが自己組織化により整列した集合体が得られた。整列方向を制限するために、樹脂製の回折格子を基板としてナノワイヤー溶液をディップコートしたところ、一次元配列は確認できなかった。これを実現するためには、Auナノワイヤーの溶液中での完全な分離を試みたうえで、より小さい1次元構造を有するナノステップ基板を用いるなど、更なる改善が必要である。Auナノ粒子のトルエン溶液をガラス基板上にディップコートすることにより大面積に均一にナノ粒子を塗布する技術を得た。Auナノ粒子2次元集合体のプラズモン共鳴周波数は孤立状態の520nmから580nmにレッドシフトした。酸化鉄をコートしたAuナノ粒子では最大で650nmまでレッドシフトした。Auナノ粒子の光学特性は周囲の状況に応じて大きく変化することが明らかとなった。Auナノ粒子とFeナノ粒子を急速に凝集させて作製したランダム共凝集体を作製した。共凝集体ではその混合比を変化させることによって相互作用の強さを自在に変化させることができることが明らかとなった。共凝集体について磁気測定を行ったところ、相互作用の強さに応じて、系が軟磁性化することがわかった。またスーパースピングラスやスーパーフェロといったバルク材料では発現し得ない特異な磁気特性の発現が示唆された。
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