本申請課題は、タンパク質のみを構成成分とする高機能ナノ粒子の構築を目的として行った。エラスチン由来のポリペンタペプチド(GVGVP)nは、周囲の温度上昇に応答して構造変化を起こし自己集合する性質を持っている。そこでこの配列をベースにしたタンパク質を遺伝子工学的に合成し、温度応答特性を有する粒子状ナノ構造体を構築する。タンパク質のみを構成成分とするため、高度な機能を容易に付与することが可能であり、かつ生体親和性、生体適合性、生分解性、生体吸収性に優れるため、生体に導入する機能材料としての応用が期待できる。 本年度はタンパク質の発現・精製、およびそれを用いて構築したナノ粒子の基本的特性の評価を行った。ナノ微粒子の基本構造となるタンパク質は、(GVGVP)nとポリアスパラギン酸(Dm)を遺伝子工学的に連結して作製した。この際nとmの数が異なるタンパク質を様々な組み合わせで設計して遺伝子構築を行い、大腸菌で遺伝子発現が可能な発現ベクターを作製し、大腸菌体内発現により各タンパク質を作製した。設計の狙い通りに、作製したタンパク質がサイズ制限された粒子を形成するかどうかを動的光散乱(DLS)により測定した。その結果、温度に応じて粒子の形成、崩壊を可逆的に制御できること、nとmを調整することにより粒径を50nm程度に制御できることなどが明らかとなった。また透過型電子顕微鏡(TEM)を利用した形態観察により粒子の形成を確認した。
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