表面保護層に機能性分子を導入した超常磁性鉄酸化物ナノパーティクル(SPION)から機能分子を切断するためのパラジウム触媒を表面に導入したSPION2を合成し、これを用いて、前年度に合成した、ブテニルエーテルを介してフルオレセイン誘導体を導入したSPION1からの蛍光分子の放出反応について検討を行った。 Pd導入SPION2は表面にカルボキシル基を持つSPIONの水溶液にEDC存在下、ビス(ジフェニルホスフィノエチルアミン)パラジウムジクロリドを反応させた後、透析により精製することにより合成した。TEM観察およびDLS測定により、2の水溶液中での粒径は1と同様に約20~30nmと見積もられた。 次にPd導入SPION2の水溶液にNaBH_4を加え、Pd(II)をPd(0)に変換した後、フルオレセイン誘導体導入SPION1水溶液を加え、Pd(0)によるアリルエーテル部位の切断反応を蛍光を用いて追跡した。その結果、反応時間の進行に伴い、フルオレセイン誘導体に帰属されるλ_<max>=510nmの蛍光強度が増大し、SPION2からフリーのフルオレセイン誘導体が放出されることが確認された。 さらにこの反応を磁場下(600mT)で行い、蛍光強度の増加速度を非磁場下(0.6mT)と比較したが、磁場下と非磁揚下では反応速度に有意の差は見られなかった。磁場下の反応では明らかにSPIONの凝集が見られたため、非磁場下でも反応の進行に伴いPd(0)がPd(II)に変化するに従い、SPION2の表面電荷が正に傾き、表面に負電荷を持つSPION1との静電反発が減少し、非磁場下でも磁場下と同様に反応が進行したと考え、それぞれのSPIONの表面にさらに負電荷を導入することとした。 そこでSPIONの表面保護層のカルボキシル基にタウリンを導入したSPIONを設計し、タウリンの導入比率と凝集挙動について検討を行った。 これらの結果は本研究の目的であるSPIONを用いた反応の磁場制御の実現に向けて、重要な知見となる。
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