研究概要 |
本研究の目的は、海水環境下できわめて迅速に接着硬化する、フジツボキプリス幼生の接着剤のしくみをまねることで、水中で働く瞬間接着剤を考案する手がかりを得ることである。21年度の研究実施計画に照らし、以下の3点について、研究の概要を記載する。 1)フジツボ幼生タンパク質の組換えタンパク質ドメイン、およびそれらのドメイン由来のさまざまな部分ペプチドの調製 フジツボ幼生セメント候補タンパク質はCcg-57k,Ccg-36k,Ccg-BSP,Ccg-ASP,Ccg-TRR,Ccg-LOXなど複数の成分からなる。それらは、それぞれ特異な配列とアミノ酸組成を持つ(岡野フジツボ類の最新学、2005、化学と生物、2007)。そこで、種々のpETベクターを用いて大腸菌での発現を検討した。しかし、Ccg-57kとCcg-ASPを除き、不溶化してしまい、回収できなかった。そこで、Brevibacillusの系を用いて発現させたところ、大腸菌では可溶化できなかったタンパク質を可溶化した形で得ることに成功した。 2)調製されたタンパク質、またはペプチドの塩水との相互作用を簡便に調べる系の開発 フジツボ由来のタンパク質、またはペプチドを用いて、in vitroでさまざまな塩溶液における溶解性やタンパク質問相互作用、自己集合性を測定する装置を、システム科学技術学部能勢教授と開発している。成果の一部は特許出願した。 3)原子間力顕微鏡(AFM)を用いた塩水環境下でのマクロ接着力の定量化法の開発 ナノスコープIIIa(ピコフォース付き、日本ビーコ社製)の操作に習熟するとともに、タンパク質をプローブにうまく結合させるための基礎的な検討を行なった。その結果、液中モードと力測定モードに関し、工夫が必要ないくつかの問題点をみいだした。
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