本研究では、霧状の微小な液滴を反応場とし、ここにマイクロ波照射による遠隔加熱を行って、液滴内部の微小な空間に起因する特異な化学反応を誘起させようと計画している。そこで、平成21年度は、霧状の液滴を連続的に発生させて、この微小な液滴をマイクロ波照射する導波管の中に導くための基礎検討を行った。まずは、超音波ミスト発生器を耐有機溶媒に改造し、ガラス管と連結させ、出口の圧力をさげることによって発生したミストが連続的に運ばれて、マイクロ波が当たるようなフロー装置を作成した。照射するマイクロ波としては、家庭用の電子レンジで用いられている比較的簡便なマルチモード方式と、マイクロ波の位相を揃えた上にスタブチューナーを設置してマイクロ波の焦点が微小な液滴が浮遊するガラス管に集中させることのできるシングルモード方式を検討した。特筆すべきは、後者の場合マイクロ波エネルギーの約90%が化学反応に使われたことである。このようにして、微小な液滴ミストを連続的に発生させて、マイクロ波照射による化学反応を実施できるところまで、たどり着くことができた。そこで、次のステップとして、この協奏的反応場システムの有効性を検証すべく、まずはモデル反応として微小液滴におけるビニルモノマーのラジカル重合反応を選択した。その結果、溶媒ブリー系でも沸点の比較的高いモノマーと分解温度の低いラジカル開始剤との組み合わせで、微小液滴反応場におけるマイクロ波加熱による重合反応を実現することができた。
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