本研究はMEMS技術による使い捨て診断チップが医療診断分野へ本格的に普及し大量に利用される際に大きな問題となる医療廃棄物としての課題を解決し、かつ低コストの特長も備えた「紙」を基材とした診断チップの新しい製造・デバイス技術-医療診断向けPaper MEMS技術の創出に関するものである。Paper MEMS診断チップを実現するためには(1)定量性・液状試薬適用性、(2)前処理等も含めた全自動化という課題を克服する必要がある。本研究期間においては課題(1)、「紙」のSiやプラスチックへの代替性を確立するために液状試薬・試料を保持可能な耐水性を有する特殊紙を見出し、種々の加工方法について検討し寸法精度に優れたマイクロ流路製造技術を開発することを目的とした。まず加工方法については、関連材料メーカー(日本製紙パピリア、日本特殊紙他)、公的研究所(高知県立紙産業センター)、文献等で製紙技術、紙材料を調査、いくつかの方法について検討、量産性を考慮して最終的には型によるマイクロインプリント加工を選定した。次に、型としては深掘りドライエッチングで凹凸状にしたSiを用い、紙材としては樹脂が表面に薄くコート(厚み20μm)された紙を選定した。また深さ50μm程度の流路を形成させるために紙の厚み、Si型の加熱温度、加圧時間等を評価し、紙厚さとして200~300μm、加熱温度として90~110℃、時間として1分程度が適当であることを見出した。本方法で100μm幅の流路において流路幅を±10μm以下の平滑度に抑えられることを確認した。マイクロ流路の上面は、耐水性を有する透明セロファン(流路内部の観測用、融着用のコート層有)で封止し、この流路にポンプからの配管を接続し液体を導入、内部圧力を計測したところ~130kPa(30分以上)を確認し、目標指標の0.1MPa以上の耐水性があることを示した。なお紙など柔らかい素材中での流動予測のための流動解析手法も併せて開発した。
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