研究概要 |
液晶は固体の性質を一部有するので,圧電効果を発現することが期待できる.過去の研究は静的な場合,すなわち固定された2枚の平板間に液晶を充填し,壁面での分子配向角を変えた場合や電場・磁場を印加した場合に限定されており,流動または大変形を扱った研究は皆無である.本研究では,液晶にせん断流を付加した際に発生する分極値の時間変化を調べる.すなわち,(1)液晶はせん断変形を電気エネルギーに変換する"液体状圧電体"となり得るのか,(2)もしそうであるならどの程度の電圧を発生するのか,(3)歪み,歪み速度,および力を計測するセンサに応用可能かについて数値計算と実験から詳細に検討する.本研究が成功すれば,如何様にも小さく,如何様な形状にも適合できる歪み計,歪み速度計,さらには微弱な力を計測できる力学センサの開発が可能となる. 平成21年度は,平板駆動型と円筒回転型の2種類の流れ場を対象として,液晶にせん断を付加した場合の分子配向分布と分極値について数値計算により検討した.2枚の平板間に充填された液晶に,片方の平板を平面方向に相対駆動させてせん断を加えた場合,2枚の壁面間に発生する分極値は壁面での分子配向角の差に依存することがわかった.また,二重円筒間のせん断流れの場合には,内筒径が大きくなると2πねじれた配向角分布の発生確率が高くなることから,流路の曲率が分子配向挙動に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.
|