本研究においては、民間分野、特にコンテンツ流通における電子私書箱の利用を想定し、これら分野において社会保障カードに搭載される予定の公的認証基盤と「電子私書箱」を利用するために必要となる機能を整理するとともに、どのようにそれを実現するべきかを研究・検討している。 この中で、本年度は、まず公的認証基盤で利用するICカードと電子私書箱を連携させるための方法を検討した。具体的には、東京工業大学の学内認証基盤を参考にして、サービス利用者の認証機構として必要な機能を検討するとともに、利用者の持つICカードに付番されている個人識別番号と、各種サービスで利用する個人識別番号間を統一せずに、且つ連携させる方法を提案した。また、コンテンツの利用形態を調査し、電子私書箱及び公的認証基盤と連携したコンテンツ利用権流通の在り方に関する検討を行うとともに、コンテンツ流通にかかわるプレイヤを整理し、各プレイヤの役割を整理した。そして、電子私書箱に対してコンテンツ利用権を保存し、ライセンス管理サーバに対して利用権の保障をおこなうことで、正当な利用者であれば、端末制限やコンテンツのコピー制限などをうけることが無く、いわゆる私的利用の範囲においてはコンテンツの安全な利活用を可能とするシステムを提案した。さらには、利用権などを管理する電子私書箱の利用者ポータルを、情報フローの中心的存在とするべき機能である、コンセルジュ機能について、そのあり方、機能、実現方法について検討し、本年度は、公的情報を利用者を中心としてコントロールできることを示した。来年度以降は、提案システムの機能仕様をまとめ、コンテンツ利用権を管理・配送できるプロトタイプを作成してその有効性を確認する予定である。
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