研究概要 |
巨大技術システムにおける安全確保のためには従来から工学的手法によるリスクの同定,発生頻度や影響規模の評価などが行われており,こうしたリスク評価の結果に基づいて安全性向上のための対策が施され,さらにその対策の効果についても工学的な評価が行われつつある。技術システムにおける安全確保のための一連の活動の重要な課題のひとつは,安全目標の設定,すなわち,「どこまで安全性を追求すれば十分なのか(How safe is safe enough?)」という問題である。 本研究では,受容される安全水準を決定する要因を総合的・定量的に検討する方法論・手法を提案するとともに,企業の安全達成能力としての「保安力」を図る指標(performance indicator)についての調査を行い,複数の企業へのアンケートや保安担当者へのインタビューによりその指標の妥当性と合理性について考察することを目標として調査研究を行った。 初年度にあたる平成21年度には,まず文献等による基礎調査を行い,重大産業災害の社会受容性(Public acceptance)に関する仮説モデルについて検討した。また,並行して海外の主に総合化学,石油化学系企業を訪問し,産業災害「に対する組織の取り組みならびに組織のあり方,企業の安全文化等に関する調査を行い,欧米と日本の企業の相違点について整理した。今後は,基礎調査の成果を踏まえ,重大産業災害と社会受容性に関する幾つかの仮説モデルを作成し,これらモデルを,今後実施するインタビュー及びアンケート調査によって立証・定量化していく予定である。
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