研究概要 |
非線形長波式に基づく津波伝播・浸水予測のシミュレーションコードをGPUに実装し,低コスト・高効率の津波解析システムを開発した.基礎となる解析プログラムは,非線形長波式をLeap-frog法で離散化したTUNAMI-Codeである.GPU上での高速なメモリを利用するために,データ構造を読み取り専用(テクスチャ)の領域と書き込み用の領域を分割して扱うよう工夫した.また,計算領域は128個のブロック(各128スレッド)に分割し,並列実行を可能にした.領域間の水位・流量の接続に関しては複数スレッド間でデータ競合が起こる可能性があるため,副プログラムも分割して実装した.津波解析コードを構成する各副プログラムの実行時間をCPU,GPUそれぞれに対して求め,GPU計算の計算効率を明らかにした.従来のCPUを用いた計算においては,連続式による水位の計算,運動の式における流量の計算,時刻歴最大値の更新,および次時間ステップに向けての変数の更新の順に計算負荷が高く,GPUで演算を行うことでそれぞれ25倍以上の大幅な高速化を実現することができた.また,解析全体においても約28倍の高速化を達成することが出来た. 本研究で使用したのは25万円程度のPCである.6時間分の津波予測にかかる時間はわずか46分であり,圧倒的に速い速度で計算を実施できることが分かった.より高速なGPUの並列化や予報区に応じてシステムを分散配置することで,従来の気象庁のデータベース駆動型津波予報システムを圧倒的に凌ぐ速度と精度でリアルタイム浸水予測が可能であることが分かった. 東南海・南海地震津波の発生を想定した場合,地震発生から3時間先の予測を行う場合には約20分以内に計算を完了することが可能であり,高知県沿岸・紀伊半島の一部の地域を除いて,津波到達前の浸水予測が可能であることが実証できた.
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