生命はL型アミノ酸から構成されるタンパク質とD型デオキシリボースを含むDNAから構成されている。このように、生物学的経路の中心の役割を担うタンパク質とDNAはホモキラリティーが確立しており、その選択性が厳密に制御されている。しかしながら、L型タンパク質とD型タンパク質問、あるいはD型タンパク質同士の相互作用について実験的に解き明かされた報告はほとんどない。これらを解明するためには、L型タンパク質だけではなく、D型のタンパク質を用いた解析が必須であるが、天然のリボソームではD型アミノ酸などの非天然アミノ酸をペプチド鎖に組み込むことが出来ず、タンパク質翻訳により非天然の生体分子を得ることは不可能である。本研究では、D型タンパク質翻訳系の確立を目指し、『D型アミノ酸をペプチド鎖に組み込むことの出来るリボソームの開発』を目的とする。 前年度までにペプチド結合転移反応の反応中心であるペプチジルトランスフェラーゼセンター(PTC)を変異させたランダム変異ライブラリーを作製するため、23SrRNAのDNA配列を含むrrnBオペロンをクローニングしている。本年度は、リボソーム立体構造の詳細な解析結果により決定した二カ所の部位(2444-2449位と2498-2535位)にランダム変異を導入する手法としてランダムプライマー法を用い、1.rrnBオペロン全体をPCRで増幅する方法および2.変異導入部位周辺をPCRで増幅した後、全長rrnBオペロンへと組み込む方法の二つの方法を実施した。その結果、1.rrnBオペロン全長をPCRで増幅する手法がrrnBランダム変異ライブラリーの作成に適していることが明らかとなった。この手法を用い、PTCにランダム変異を組み込んだrrnBライブラリーの作製法を確立した。
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