研究概要 |
ハマウツボ科のナンバンギセルは、最も有名な寄生植物である。ナンバンギセルは葉緑素を持たないため光合成を行わず、ススキ(Miscanthus sinensis)などのイネ科植物の根に寄生し、そこから養分を取り生育する。ナンバンギセルの発芽誘導物質は、そのホスト植物であるススキの根から分泌されると考えられている。本年度は、根分泌成分の吸着回収成分を原材料とする活性物質の精製を検討した。一方、ススキ地下部分を採集した後、ススキ根より抽出物を調整し、ナンバンギセルを用いた活性試験方法を検討している。現在のところ再現性の高い試験方法の開発には至っていないが、栽培条件の検討等を含めて再度検討を行う予定である。ナンバンギセルの種子は発芽率が低く、安定的な実験材料の供給には、栽培条件等について詳しい検討が必要と考えられる。 これと平行して、分析ならびに活性試験のポジティブコントロールとして使用すべく、根寄生植物の寄生現象を誘導する活性物質である5-デオキシストリゴールならびに誘導体の合成を完了した(JOC, 2009)。合成経路は、連続的環形成反応を含み、各種の立体異性体を同時に供給しうるものである。次年度は、合成した両鏡像体並びに立体異性体を用いた活性試験を行う。近年、種々の植物から、寄生誘導物質としてストリゴール誘導体が単離されており、ナンバンギセルの活性本体がこれらとは異なることを示したい。
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