ハマウツボ科のナンバンギセルは、最も有名な寄生植物である。ナンバンギセルは葉緑素を持たないため光合成を行わず、ススキ(Miscanthus sinensis)などのイネ科植物の根に寄生し、そこから養分を取り生育する。ナンバンギセルは、イネ科やカヤツリグサ科と特異性の高い寄生関係にあるため、その寄生にはストリゴラクトン類と異なる未知の共生因子の存在が予想された。ごく最近、申請者らは、AM菌とミヤコグサの共生に関与するストリゴラクトン類の一種である5-デオキシストリゴールを化学合成した。ナンバンギセルの寄生が、既知のストリゴラクトン類によるものとどのように異なるのか興味深い。 ナンバンギセルの発芽誘導物質は、そのホスト植物であるススキの根から分泌される。根分泌成分の吸着回収成分を原材料とする活性物質の精製を進める。生物活性分子の分離は、ナンバンギセルの種に対する発芽誘導潜性を指標とした生物検定試験に基づいて行う。ミヤコグサ(Lotus japonicus;マメ科モデル植物)やシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana;アブラナ科モデル植物)の種子を用いる対照試験を同時に行うことで、ナンバンギセルの種子に特異的な発芽誘導活性を示す物質を探索した。目的とする活性物質は、水溶性の高い成分であるが分離法の確立には至っていない。
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