研究概要 |
ブレベナールは、赤潮原因渦鞭毛藻Karenia brevisから単離されたポリエーテル天然物であり、喘息の動物モデルにおいて気道の粘液クリアランス速度を極低濃度で顕著に増大させることから、嚢胞性線維症などの呼吸器疾患に対する新しい治療薬リード化合物として注目されている。本研究では、独自に開発したブレベナールの効率的全合成ルートを活用した人工類縁体ライブラリーの構築と構造活性相関の解明を基盤として、呼吸器疾患治療薬リード化合物を創製することを目的とした。 本年度は、ブレベナールのAB環部の官能基に関する構造活性相関を明らかにするために、これら官能基のない人工類縁体の合成に取り組んだ。DE環部フラグメントの大量合成を行うとともに、C9位メチル基のないAB環部フラグメントの合成を達成した。今後、両者をカップリング後、C環の構築と側鎖導入を経て、C9,C12,C14位官能基のないブレベナール人工類縁体群の合成を行い、生物活性評価を行う予定である。 さらに、ブレベナールの第二世代全合成の過程において見出した1,ω-ジオールの直接的な酸化反応による中員環ラクトン合成法について詳細に検討を行った。これにより、従来法における保護基の変換、酸化段階の調節、高希釈条件を必要としない簡便な汎用性の高い中員環ラクトン合成法を確立した。また、7員環エーテル骨格を有する海産天然物類縁体イソローレパンの短段階全合成を達成し、本反応の有用性を実証した。
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