研究課題
本年度は、昨年度までに成功した「細胞内レチノイン酸結合タンパク質(CRABP)分解誘導剤」について、(1)構造最適化、(2)分子作用機序の確認、(3)他のタンパク質への応用展開、の3項目についての研究を遂行した。その結果、【項目1】レチノイン酸とメチルベスタチンとのハイブリッド分子を構成するスペーサー部分について、その結合部位の官能基をエステルにするかアミドにするかの選択、加えてスペーサーの炭素鎖の選択に依存して、CRABP特異性ならびにCRABP1/2のサブタイプ選択性を引き出すことができることが分かった。【項目2】各種阻害剤やウエスタンブロット法を用いた緻密な解析により、CRABPの分解は、当初に構築した作業仮説通り、(1)cIAPlに依存し、(2)そのユビキチン化活性を利用した、(3)プロテアソーム系による分解機構であることを明確に示すことができた。このことから、本戦略が広く他のタンパク質にも応用可能であることが示唆でき、展開を図ることとした。【項目3】昨年度創製した、CRABP分解誘導剤の部分構造であるレチノイン酸が、核内受容体であるRARのリガンドでもあることから、CRABP親和性を持たない合成レチノイドや、他の核内受容体リガンドとメチルベスタチンとのハイブリッド分子を設計・合成し、さまざまな核内受容体分解誘導剤を創製しようとした。その結果、RAR特異的分解誘導剤、アンドロゲン受容体分解誘導剤、エストロゲン受容体分解誘導剤などの創製に成功し、ある程度の一般性を示すことができた。
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Journal of the American Chemical Socieiy
巻: 132(16) ページ: 5820-5826
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/chem/IMCB-8ken-HP/Index.html