研究概要 |
イノシトールリン脂質などの脂質メッセンジャーや一連のキナーゼのそれぞれがどのような細胞機能を制御に関わっているのか,そのような生体情報分子の機能解析を目的として,薬理学的手法や関連遺伝子に対するRNA干渉法(RNAi)が用いられている.既存の研究手法としての薬理学的手法やRNA干渉法は,対象となる脂質メッセンジャーの産生酵素やキナーゼを細胞内全体で機能阻害(global knockdown)することになる.従って,細胞内の様々な場所で生成(もしくは活性化)する生体情報分子の機能を,それら既存法に基づいて探索することは極めて困難である.従って,蛍光プローブの開発に基づく分子イメージングによって初めて知り得た脂質メッセンジャーやキナーゼによるタンパク質リン酸化の時空間動態について,それが細胞機能制御においてどのような意味を持っているのかを探索しようにも,上述のような既存法ではこれが叶わず,結果として,細胞機能を探索する既存法の限界を感じざるを得ない.従って本研究においては,細胞内の任意の特定局所においてのみ生体情報分子(本申請研究では脂質メッセンジャーであるPI(3,4,5)P3とキナーゼのAkt)の生成もしくは活性を特異的に抑制(spatial knockdown)する新しい分子プローブ"局所的ノックダウンプローブ"を設計・開発し,これを用いて当該生体情報分子による細胞機能の空間制御に迫る. 研究初年度である平成21年度においては,特に,生体脂質であるボスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PI(3,4,5)P3)について,この生体脂質の細胞内動態がどのような細胞機能や個体レベルでの生理作用を制御しているのかを明らかにすべく,当該生体脂質の細胞内"局所的ノックダウンプローブ"を設計し,これをコードするcDNAを遺伝子工学的手法に基づいて作製した.作製したPI(3,4,5)P3の局所的ノックダウンプローブのcDNAを培養細胞に発現させ,当該プローブの機能阻害能について培養細胞レベルでの基礎的評価を終えつつある.
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