研究概要 |
1.日本近海の高知県室戸、五島列島、沖縄、小笠原諸島近辺においてアカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴの骨軸試料を採取した。また、地中海及びミッドウェー沖でベニサンゴ、深海サンゴをそれぞれ採取した。 2.化学分析及び各種表面解析法により、宝石サンゴの硬組織中における無機成分の組成を明らかにした。特に、宝石サンゴの炭酸塩骨格に対して大型放射光施設SPring-8における放射光蛍光X線分析を適用した結果、Ba,I,Mo,Sn,Mn,Zn,Cd,Brの10元素の濃度組成を世界ではじめて求めることができた。マッピング分析においては、Ca及びSrは骨格全体にほぼ均一に分布するのに対して、Ba,I,Moは成長輪よりも微細な粒状構造を示すことが分かった。日本近海産アカサンゴ、地中海産ベニサンゴ、小笠原及びミッドウェイ産深海サンゴの骨格中に含まれる微量元素組成を比較した結果、Ba及びCdについては、各宝石サンゴの間で骨格中の濃度が異なる傾向が得られた。海水中におけるBa及びCdの濃度に応じて骨格中の成分組成が変化したと考えられる。これらの微量元素は、宝石サンゴの種や産地を同定する指標としての役割が期待される。 3.大型放射光施設SPring8の放射光赤外分析を利用して、宝石サンゴの炭酸カルシウム骨軸に対して10マイクロメートル角の赤外光を照射し、骨軸の成長にともなう微小な炭酸カルシウムの層構造変化を解析した。その結果、赤外光の吸収強度は年輪と一致して増減することが分かった。 4.各宝石サンゴ種の有機組織と硬組織を分離後、それぞれの画分から抽出したタンパク質をSDS-PAGEで分離し、宝石サンゴの色素成分の保持に関係するタンパク質組成を明らかにした。タンパク質同定等の詳細な解析は次年度に行う予定である。
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