研究課題
2年間にわたる本研究の目的は、性取引に従事する移住労働者が置かれた社会状況を、「人種差別」を鍵に説き明かし、諸外国の「売買春」政策、人身取引対策、国内国際法政策と対比して、今後の当事者の権利擁護、関連教育研究・政策提言分野に貢献することである。この観点は、グローバル化した性労働と人身取引をもっぱらジェンダーと経済の不平等の結果と分析してきた国内外の先行研究に、新しい検討課題を加える点で重要である。2009年度は、(1)西欧および北米、(2)東南アジア(フィリピンとタイ)、(3)北東アジア(香港をふくむ中国と韓国)、(4)日本を出身地域とする日本国内の性労働者を対象に、各20人に対する対面調査票調査と、各5人に対する個人史の聞き取り、および性取引利用者と経営者(できる限りの人数)、人身取引被害者救済対策を担う国家・民間のアクターたち(合計10人前後)に聞き取りを行う予定であった。しかし、調査票調査や聞き取りに応じてもらう程に性産業で働く外国籍の人びとの信頼を得るには予定していた以上に時間と費用がかかり、調査票調査、インタビュー調査とも半数の達成にとどまっている。おもな原因は、日本滞在の資格によっては法に触れる可能性のある移住性労働者の人びとにとって調査者は警戒すべき対象であること、知り合った当事者の意見を積極的に取り入れ、調査・質問項目の訂正を繰り返したこと、予算面では、予想以上に詳細な通訳・翻訳が必要であることであった。経営者、利用者、救済対策をになう人々についても半数を達成した。また、日本、韓国、香港を含む中国、タイ、イギリス、ドイツ、スウェーデンなど特徴的な関連政策を実施する各国を比較するため、2009年度は日本、韓国、中国について資料調査を行う予定であったが、関連他研究に関わってドイツ、イギリスに渡航する機会を得たため、こちらを先に実施した。
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Proceedings of International Symposium on Asian Gender Under Construction, International Research Center for Japanese Studies
ページ: 197-210
「アジア太平洋におけるリージョナリズムとアイデンティティ」研究会『シンボルとしての土地』
ページ: 47-58
http://www.gcoe-intimacy.jp/staticpages/index.php/MemberAchievement_ja