研究概要 |
日本のパブリックアートに関する議論を「野外彫刻」論中心の狭い枠組みから解放し「公共性」を軸としてパブリックアートの諸要素・諸次元の含意を明らかにするという目的に即して平成22年度の研究実施計画として挙げた項目は以下の2つである。 (1)基礎的作業の一環として、蓄積の多い欧米の議論の分析・検討 (2)日本におけるパブリックアートの歴史と現在を読み解く上で重要な画期的取組みに関する情報収集と分析 (1)については前年度から集中的に取り組んでいたベルリンのユダヤ博物館とダニエル・リベスキンドに関する論文を紀要に掲載しだ。歴史的記憶が公共空間のうちにどのように位置づけられ、またいかにして-単なる記録として保存されるのではなく-現代的・現在的な課題として絶えず新たに捉え直され得るのかを「建築の経験」に即して明らかにすることを試みた。 (2)については国内で「「あいちトリエンナーレ」,「瀬戸内国際芸術祭」,「木津川アート」などアートと地域社会を結びつける新たな取組みが相次いだめでそれを中心に調査した。特に瀬戸内・男木島における取組みは島の遺産とアートを自覚的に結びつけており興味深いものがあった。海外ではワシントシおよびニューヨークおけるモニュメント(エノラ・ゲイ,硫黄島記念碑,世界貿易センタービルなど)を中心に,地域の小さなパブリックアート設置運動も調査したが,資料の整理と理論的検討は平成23年度以降の課題である。
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