平成22年度は、平成21年度の調査研究を踏まえて、初等中等教育段階での哲学教育についての調査研究及び理論的・実践的検討を行った。 具体的には、オーストリアとドイツのギムナジウムで行われている哲学教育の実践に関して現地調査を行い、その教科目的・使用教材・授業方法・評価方法などについての分析・研究を行った。また、オーストリア・ライプニッツで開催された「子どものための哲学(Philosophy for Children)」の教員養成国際セミナーに参加し、対話型の哲学教育で必要とされる哲学対話ファシリテーション技術についての研修を受けるとともに、ヨーロッパやアメリカで実際に使用されている対話型の哲学教材についての調査研究を行った 実践としては、引き続き世田谷区の教科「日本語」における「哲学」の授業の中で、言語教育という観点から「深く考える」力の育成を目指した授業案の作成を試みるとともに、「哲学」の教科書改訂や指導事例集の作成に関して協力をさせていただいた。また、高校生向けの私塾や東京の私立高校において哲学の出張授業を行い、問いを哲学的に深化させていくための授業方法の構築を試みてきた。 理論的な検討としては、「哲学的に考える」ということの構成要件についての分析を行った上で、想定可能な諸規準とそのことがもたらす教育的効果についての考察を行った。 以上の研究と実践の報告は、日本科学哲学会や「哲学的思考の特質と哲学教育」研究会におけるワークショップや口頭発表で報告された。
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