近代日本における石膏像受容の特質を明らかにする研究の二年次して、平成22年度も国内外での情報収集を進めた。国内では、明治以来の展覧会目録、および美術館所蔵品目録の調査を進め、石膏像をモチーフとする絵画作品のリスト化を進めた。また、石膏像取引の推移・現況に関する聞き取り調査を、各地の画材商に対して開始した。国外については、平成21年度中に実施した北京調査に関連する資料(石膏素描集)を継続的に収集し、中国特有の素描技法・様式について、分析を進めた。また国外調査をイタリアとアメリカで実施。ナポリ国立美術アカデミー、ローマ大学附属図書館、ボストン美術館附属図書館等を訪れ、石膏像コレクション形成(散逸)の経緯および現在の利活用状況について、作品・資料・対面調査を行い、日本近代の状況を分析検討するうえで有効な比較材料を獲得した(面取り像の流通状況の相違など、大いに注目される)。 以上の調査研究によって再確認されたのは、1. 国・地域・時代によってアカデミー向けの石膏像のレパートリーが異なること2. 国・地域・時代によって石膏像の利用の仕方が異なること(美術教育用・美術史教育用)、である。 平成23年度は、国内調査結果の集約・分析を進め、公開の準備に入る。また、ボストン、台北、ミラノ等で補足的な調査を行い、18世紀ヨーロッパから近代日本・現代アジアにいたる石膏像受容史を概括し、最終的には、上記の1.2.の原因ないし背景の分析、成果の公開を目指す。
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