計画通り、1945年~1995年の50年間にわたる日本のオペラ作品の楽譜および資料の収集と整理、そして作品の具体的な分析研究に取り組んだ。出版楽譜はもとより、それよりもはるかに多い、未出版の作品の収集を日本近代音楽館や、研究機関である昭和音楽大学オペラ研究所、そして実際に初演や上演に取り組んでいるオペラ団体を調査し、楽譜が存在するかどうかの調査を行い、存在する場合にはコピーおよび写譜による包括的な収集を行って、データベース化の素材として整理した。オペラ史の概要をつかむための基礎的資料収集は思い通りに集まる面もあれば、(有名作であっても)すでに失われてしまった作品も予想以上に多いことが確認された。演奏実践に資するためには、早期の収集とデジタル化等による保存の必要性がぜひとも必要であることが痛感された。 同じく計画通り、九州のオペラ団体、および大阪音楽大学の資料室に出張して調査を行い、聞き取りおよび簡単なアンケート調査を行って、またいくつかの作品を発掘するとともに、その作品の音楽面、テクスト面での内容的な検討を行った。また、音資料、映像資料の存在も確認し、データベース化のための複製を依頼して取得し、これも重要な資料として整理・保存することができた。ファイル化して、データベース上に部分的にでもリンクできる方法を思案中である。 また、ブリュッセルでの学会(CHIMEの国際大会)では、発表とは別途に、アジアの洋楽研究、演劇研究の現状について、情報交換と議論を行った。文化触変の多様なあり方に関して、異なった領域とアプローチに関して、有意義な学術的交換ができたと思っている。
|