本研究の目的は、平成16年に死去したピアニスト、園田高弘の功績を、演奏と教育の両面から明らかにすることである。平成22年度には、昨年度に引き続き、園田が日本の自宅に所蔵していた使用楽譜と蔵書について移送とデータベース化を行うとともに、その精度を上げるべく、追加情報の入力を行った。 また、園田の演奏するCDの収集を継続的に行った。これにより、現在、入手可能である彼のCDは、ほぼすべて収集し終えたことになる。これらのCDと園田の校訂譜とを照合し、その演奏上の特徴を導き出した。これに加えて、次年度には、録音時に使用された楽譜やCDの基になった録音テープ等を借り受け、校訂譜との照合作業をさらに進める予定である。 そして、園田から指導を受けたピアニスト等の雑誌記事を調査するとともに、複数名にインタビューを行い、レッスンやプライベートでのエピソードを紹介してもらった。これらを分析することにより、彼の教育理念と教育方法等を導き出した。 以上の資料とデータに基づき、園田の教育上の功績を分析した結果、次の仮説を打ち立てるに至った、1.園田の校訂譜は、ありとあらゆる楽譜の解析を経て出版されたものであるが、園田自身は必ずしも校訂譜通りに演奏していないことから、園田個人の解釈や表現を超えた存在であると位置づけられること、2.後進への指導を、「生業」ではなく、演奏家の「使命」のように考えていたこと。 今後は、これらの仮説を裏づけるとともに、彼の演奏上の功績についても明らかにしていきたいと考えている。
|