研究概要 |
22年度は以下の作業を中心に行った。 (1)研究資料や文献を収集し、その資料をさらに充実させ、資料整理を行った。 (2)21年度に引き続き、セクションごとに痛みの表象と<共同性>の問題について、ベケットの作品を軸に様々な角度から分析を行い、考察を深めた。対馬は、前年度に引き続き、ベケットと言語経験のもたらす苦痛についての考察を行った。、またベケット作品で表現される<女性的なるもの>と痛みの問題についての分析も継続して行った。堀は、FIRT(国際演劇学会)において口頭発表を行ない、アイルランドの植民地下における言語の剥奪をベケットのラジオドラマAll That Fallのなかに見た。また、ベケット作品を演じる俳優が経験する身体的苦痛を能や古典ギリシア悲劇と比較する論文(未出版)を、フルブライト研究員として過ごしたカリフォルニア大学サンディエゴ校の大学院生と教員が集う場で発表した。田尻は、ベケットの作品における苦痛について従来のベケット研究内部でどのような先行研究があるかを検討した。その結果Benjamin Strong,Eric P.Levy, Mary Brydenらの最近の論文に有益な洞察を見出したほか、このテーマにささげられた唯一の著書であるDiane Luscher-Morata,La Soufframce portee au langage dans la prose de Samuel Beckettを読むことで新しい知見を得ることができた。 (3)海外の共同研究者との意見交換を行うための研究会を2回開催した。10月には、David H Jones氏(University of Exeter)を東京大学に、12月にはJonathan Boulter氏(University of Western Ontario)を青山学院大学に招聘し、ベケットと痛みについての研究会を外部に開かれたかたちで開催した。 (4)論文集出版の準備を進めた。研究の成果を論文集の形でまとめ、研究叢書(執筆言語は英語)として英語圏の出版社から出版するための準備を行った。主に、出版社との交渉、執筆者の原稿の編集、イントロダクションの作成を行った。
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