研究課題
研究期間初年度にあたるため、文献資料の収集と読解にほとんどの時間を費やした。収集した資料としては、フランス語およびドイツ語圏における「人種」論についての基本的な文献、人種論の発達に深く関係した人類学の成立過程にかかわる資料、とくに19世紀において人種分類にも大いに活用されたF.J.ガルからP.ブロカにいたる骨相学、および黎明期の人類学に関するものが中心である。これらの文献の読解を通して、(1)16世紀以降、ヨーロッパにおける黒人に対する「まなざし」がどのような変遷をたどってきたか、とくに、植民地政策と奴隷制廃止論が黒人表象にどのような影響をあたえてきたかが明らかになりつつある。(2)また、18世紀半ば以降、人種論がしだいに「科学的」ディスクールへと変換されていくなかで、骨相学や人類学といった新しい「科学」が生みだされ、19世紀においてこれらの「科学」が当時の政治とも無視できない関係を結んでいたことが明確になってきた。挑戦的萌芽研究ということもあり、資料収集や読解といった基礎作業に追われた部分が多く、具体的な研究実績としてじゅうぶん形にするには至っていないが、22年度に向け、まず文学や芸術における黒人のイメージの変遷について、つぎに人類学の発祥と骨相学の関係について、現在並行してまとめつつある。これらのテーマは近代ヨーロッパにおける人種問題に深く関係しており、今日のEUにおける移民問題等を考えるうえでもきわめて重要である。これまで断片的にしか言及されなかったが、同時代の文学に相当の影響を与えていることは言うまでなく、これらの基礎的作業をもとに、22年度は旅行記等の文学作品の解析に臨む予定である。
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ドイツのマイノリティ(明石書店)
ページ: 3-68, 293-296
異界が口を開けるとき(関西大学出版部)
ページ: 1-16, 95-116, 173-191, 255-265
最新ドイツ事情を知るための50章(明石書店)
ページ: 20-47, 52-59, 70-79, 90-100, 124-132, 136-150, 180-184, 213-221, 236-240, 251-255, 260-266, 280-287, 303-305